九州自動車道長崎道の東脊振インターで降りて現場へ。
このインターから現場へ向かうのは、もう数えきれないくらいだなあと心の中で呟きながら料金所を抜け、この日の現場へ向けて車を右折させる。(ここ数年、この近くだけで3家族の住まいをつくったのが昨日のことのよう!)
車はだだっ広い佐賀平野を抜けて目的地へとひた走る。制限速度50キロに従った安全運転。一車線なので、みんなのんびりと走っていく。この辺りは小運河や堀などのクリークが点在しているエリアで、大規模河川の筑後川が有明海に流れ出していることもあって、どこかしらでいつも海を近くに感じる。潮の香りはしないのに、吹く風には塩分の重たさのようなものが含まれている。
見慣れた交差点の表示を確認すると、脇見運転にならない程度で遠くに目をやり数年前に建てた30坪の平屋を探す。これがこの道を走る時のルーティンになっているが、いつもなかなか見当たらない。屋根の高さが4メートルほどの平屋は、数百メートル離れた車道からは色づき始めた稲穂に隠れて容易には見つけられないのだ。「あ、あれかな」と思ったのはほんの一瞬で、その映像は、記憶の中の木貼りの外観と頭の中でリンクして遠ざかっていった。(Nさん、元気かなあ〜)
現場に着くと、建築中の建物は足場を囲った防塵シートにまだ包まれていて、全体を見渡すことはできない。正面に回り込むと、そちら側はシートが貼ってなかったので、木を貼ったばかりの正面が確認できた。
うん、いい感じの色になっている。東西方向に貼ったガルバリウム鋼板ともバランスが取れている。
斜め方向から見ると、木を貼った壁面が屋根から斜めに降りてきて窓の所でクッと垂直に折れて土間に届いている。この斜めの部分のボリュームがどんな風に見えるのか(想像が追いつかなくて)気になっていたけれど、こちらもいい感じだった。
現場で建主さんと内装の仕上げについて数点確認を行った後、再び東脊振インターへ車を走らせた。この20坪の平屋は室内の高さが3メートル近くある。延床面積の狭さを、高い壁に設けた収納で克服しようという合理的なデザインをしたのだ。だからと言って建物全体としては2階建てのような高さにはならないから、この家も遠くからだとマッチ箱よりも小さく見えるのだろうか。
この平屋には名前がある。『ロングバケーション』。クルーザーのような外観をしているから、そうネーミングした。家族との大切な時間を、バケーションを愉しむように過ごして欲しいという願いも込めて。
この『ロングバケーション』、11月には完成するので、多くの方にぜひご覧いただきたい。